忍者ブログ

上方割烹アっ晴°

下関市完全予約制美食レストラン

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

小鰯の思い出

2月に入り、鰯をよく見るようになった



節分には魔除けの鰯がお約束とされるからか




小鰯の旬は春



学生を卒業した頃の春、地元である居酒屋さんにお世話になったときの話



その居酒屋さんは地元で何店舗かを展開している会社の持ち物のひとつで
たまたま求人を目にして応募、お世話になることになった





学生時代、お寿司屋のバイトで下働き程度だったが、寿司屋の仕事を毎日目にしてきた自分からして火を使う居酒屋の料理はどれも斬新、ましてやお酒を飲めない未成年の自分にとって居酒屋という場所はとても華やかな大人の世界だった




そこの料理長は長年料理屋を回られた方で、その経験からなる本格的な料理の数々はとても評判がよく、社内数店舗の中で売上はいつもダントツ、その全ての店舗の料理を仕切る総料理長をされていた



とても気さくな方で、勤めはじめてすぐに色んな話をして下さるようになり
よく冗談なんかもいって下さる方だったが、ある日二人の時に真面目な話



「毎月**万の給料とボーナス(高給)をもらう生活を守るため我慢も大きい会社員になってしまった」


その方のその言葉が大阪、そしてその後の北海道行きを決意する勇気となる



大阪行きの話をしたら心から応援してくれて、それまでの時間にと惜しげなく色んな仕事を見せてくれた料理長



100人を超える宴会にも大鍋を使わず小鍋でいこうと、鴨鍋をはじめ色んなダシの取り方を教えてくれたり、残った魚の活用法にと昆布じめ手綱や幽庵漬けにして見せてくれたり、カウンター店における料理人同士の暗号会話“リョウ語”について話してくれたり、あらゆる場面で「料理屋ではこうなんだぞ、大阪で覚えてこい」



そんな春


毎日何百人をも相手にするそのお店で捌いていた小鰯



単価が安い居酒屋で、安くて旬の旨い刺身を楽しんでもらおうという料理長のこだわり
手間を惜しまず小さなスプーンでひとつひとつ卸していく小鰯の刺身にこもった料理長の心


鰯が出始めると、あの春の日旅立ちの時をしみじみ思い出す













PR